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5.3.9舵及びシャフトブラケット
(1)舵
(a)高速艇の舵軸径
テレビで競艇のコマーシャルを見た人は多いと思う。マークブイを廻ろうとして舵を切った艇は船首方向を急速に変えながら、そのまま横辷りして新針路に入るのには時間がかかる。船底前部に横辷り防止フィンを付けながらもV/W1/6=55程度の艇はあのような動きをする。あれはアウトボードモーターの推力方向を変えているのであるが、舵による旋回でも横辷りの本質は変わらない。我々がここに取扱う業務用の高速艇はあれほどの横辷りはないにしても、滑走圧によって浮上った艇体と水中にある舵との組合せの抵抗のなるべく少ない方向に艇は運動し、舵の回りの水流は船体の前後方向とは角度を持った斜流になっている。この斜流の程度はV/W1/6が大きくなるほど大になり、有効舵角はそれだけ小になる。
有効舵角の減少はV/W1/6が大になるほど大きくなるが、艇の連動として高速艇の横辷り角の計測はかなり困難である。したがって、高速艇の舵強度は多数の艇の実績から安全限界を求めることになる。
ある古い艇の例であるが、満載状態に対し一般の艦艇と同じ方法で設計した舵が、軽荷状態で速力が大幅に上昇したため、従来の計算では安全率が0.8になるのに、その状態で訓練に使用されても安全であった。
一般にモーターボートの舵は、それまでに成功した艇を基に比較計算によって設計されるのが常であった。それらの安全に使用されてきた実在の高速艇から逆算して安全限界を定めたのがRR11基準(案)である。
高速艇は舵角3°〜5°でバランスするよう計画した吊下舵を使用するのが普通である。小型の艇だから人力操舵が多い。人力操舵では、たまにしか使用しない大角度転舵では舵が重くなっても、常時使用する当て舵や変針時の常用舵角で軽く操作できることが大切である。操舵装置が故障したとき、舵が流れて大角度でバランスすることは好ましくないなどの実情を踏まえた設計の慣習である。
舵の直圧力Pは
P=c1AV2∫(θ)
と表すことができる。ここにCIは舵断面形状や舵面のアスペクト比等によって決まる係数であるが、広く舵計算に使用されるビューフォイ(Beaufoy)の式は
P。=58−8AV2sinθ(kg)
A:舵面積(m2
V:流入速度(m/sec)
θ:舵角(deg)
圧力中心はジョッセル(JoeSel)の式
x=(0.195+0.305sinθ)B

 

 

 

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